SFR鮎式」の紹介

回すペダリングの身体の使い方に気付くためのペダリングドリルです。KPRBメンバーに、回す楽しさを是非知っていただきたく考案してみました。速くなるとは言ってない(笑)

簡単な説明

場所
勾配5~7%の上り坂を利用します
ギア
インナーローを使用します
事前準備
十分にサドルを下げます
手順
  1. 30rpm以下の超低ケイデンスで登り始めます
  2. クランクの回転がクルクルとスムーズに回らず、ギクシャクしていることを確認してください
  3. クランクの回転がスムーズになるまで、徐々にケイデンスを上げていきます
  4. 少し回転を落としてもスムーズに回すよう、努力してください
  5. ギクシャクせず回せるようになってきたら、ケイデンスを少しずつ下げていきます

詳細な注意点他

回す意識が重要な理由

注意! 以下はだらだらと長文になりますので興味のある方だけ、暇つぶしにお読みください。

figure1. 踏みつけるばかりのペダリング

「ペダルは上手に体重を乗っけて踏みつけるもの」

私は何年もの間、そのような固定観念を持って自転車に乗っていました。人間の身体の構造と重力を考えれば踏みつけるチカラが一番大きいのだから、これを最大限に活かすペダリングが正しいはずだ、と。

回すペダリングについても、人間の足は円運動するような設計になっていないのだから、そんなものは机上の空論だとすら思っていて、すんでのところで老害になるところでした。とんでもなく楽しい自転車の乗り方があることも知らずに……。

踏みつけるペダリングでは、figure1のようなベクトルになります。回転が上がるほどに踏み遅れることが多くなるので、3時より下で最大のトルクが発生しがちです。ベクトルは接線方向ではなく、真下をむいているので若干トルクの無駄が発生しています。練習によって3時をピークに持ってくることはできたとしても、踏む意識だけだとベクトルは真下にしか向きようがないわけです。でもそんなことは解った上で、正しいと思っていたのです。

踏みつけるペダリングでも強い人はいます。だから、それでもいいんだ、と思っていました。実際、それが正解という人も多いと思います。個人差というやつです。

それだけではない、もっと大きな可能性に気づくことができたのは、ロマン・バルデ選手のおかげです。あんなに細い足で、どうやってあのトンでもないパワーを出しているのだろう?という疑問から始まりました。

「あれ?もしかして足の力使ってなくね?」

……

稀に見かけるキレイに回せている際のベクトルは、figure2のような形をしています。

figure2. 回すペダリング

0時とその裏である6時でパワーを生むためには水平方向のベクトルが必要です。これは相対的に小さなものになりますが、右クランクが0時の時は左クランクは6時、左クランクが0時のときは右クランクは6時にいてそれぞれ重力の影響が少ない。左右のクランクで力を合わせてチェーンを引っ張ることができます。0時と6時は表裏一体。軽視すべきではないように思えませんか?

0時+6時を通過させるのに、膝関節の動きだけを連想していたのが間違いのもとでした。0時+6時では、全身の多関節運動の微細な力を結集すれば、相応のトルクを発生させることができたのです。無理なく自然な動きで。0時+6時だけではありません。1時+7時、2時+8時、5時+11時、4時+10時などでも同様のことが言えます。接線方向にかなり近いベクトルを無理なく発生させることは、可能です。ただし足だけを使っていてはそれは不可能だと断言できます。動きとして複雑すぎるので図説は無理だし言葉で説明することもこれ以上は無理です。しかしやり方は確実に存在しており、リカバリーなどの機会を使って練習し、自分なりのやり方を探る価値はあります。

さて、3時では重力を最大限に生かした大きなトルクを発生させることができます。これには真下へのベクトルが必要なので、一見、踏みつける力が必要なように思えます。ところが……。

3時は一瞬で通過する。90rpmの世界では本当に「ほんの一瞬」の出来事です。ペダルを「踏む」意識でこの一瞬を捉えるのは困難で、どうしたってfigure1のようなペダリングになります。しかし「回すペダリング」なら、この一瞬に向けて徐々にトルクを乗せていくことができ、タイミングを図りやすいのです。実際のところ、体重を上手く乗せている感覚で通過させるだけで、踏む意識はゼロに近くなります。あくまでも私の場合ですが、340wまでは踏んでいる意識がほぼゼロです。

これができるようになった当初、370w付近まであまりにも軽く回るので自分が強くなった気がして回し続けたところ、あっという間に酸素が足りなくなってしまいました(笑)。結局の所どれだけ酸素を利用できるかというリミットが働くので、回すペダリングでパワーアップできる領域は限られるように思います。私の場合、LT以下の領域であればCPが数10w上がりました。要するにエンデュランス能力は飛躍的に向上します。FTP付近で起こった変化は数wですが、FTPを40分以上維持するのが苦ではなくなりました。「FTP = 60分CP」という定義への違和感がなくなったということです。VO2max域以上でCPの変化はありませんが、明らかに翌日の疲れが少なくなり、自転車に乗るのが3倍くらい楽しくなりました。

ところで3時の裏、9時でトルクを生むことはできるのでしょうか……

9時では重力に逆らって足を持ち上げる動作をスムーズに行うだけでも相応の労力が必要で、逆側の3時にブレーキを掛けないだけで十分である、という意見を耳にします。私もそう思います。実際公開されている図などでも、9時での上方向のベクトルを見たことはありません。回すペダリングで8時を通過して10時に繋げることができれていれば、何の意識も必要とせず9時を処理できます。

その他のヒントらしきもの

Garminデバイスをお持ちなら……

この練習中、上手く回せているとGarminの「トルク効率」という項目は99%付近で推移しますので、Edgeをお持ちの方は表示させておくと面白いかと思います。ローラーでこの練習をする時は重力フィードバックの代わりとして使えるかもしれません。

ただしこの「トルク効率」、パワーが上がるほどに高い数字が出やすくなってきますので、2.0~3.0w/kg程度の低強度で行わないと良い指標とはならないことをご了承ください。

具体的すぎるフォーム指導にはご注意を

フォームは自分で見つけるものだと思っています。最終的に完成されたフォームというものが仮に「ある」として、それを身体の出来ていないサイクリストが外見だけ真似をしても駄目かもしれません。……いや多分駄目です。例えば、完成されたフォームを身につけたプロは強烈なスタビライザーを働かせた最小の動きで、最大のトルクを発生させているはずです。この「最小の動き」だけ真似てしまったらどうなるでしょうか? 身体の使い方は全然違うのに、外見だけ一致していることになりはしませんか?

具体的なフォームを指導するトレーナーは多いと思います。「背中を真っ直ぐにしろ」とか、「かかとを上げ下げするな」とか、「体幹をカッチリ固定させてバイクを振るな」とか色々あると思いますが、結局のところ身長体重、骨格、筋肉のタイプ、メンタルモデル、鍛錬度、人それぞれ全部違うわけで、私は、正しいフォームというのはまず身体の使い方を知り、鍛錬を積んだ結果として、自分独自のものが自然と身につくもの、という立場です。首に重りをぶら下げて上半身を微動だにさせない練習をしている風景をテレビで観たことがありますが、こういったものを鵜呑みにして悲しいことになってしまっているサイクリストが日本にはたくさんいる気がしています。

とはいえ、他人が掴んだイメージを色々試すのはありですし、自分のものにしたイメージやキーワードはたくさんあります。「大きく回す」「荷重移動」「骨で踏む」「芯でとらえる」などです。現在では「大きく回す」が自分の感覚に一番近いのですが、それも腹から下だけの話で、自分の言葉で言えば「四足歩行の野生動物(トカゲ?)になって早歩きしている感じ」です。腕の動きまで連動してくるのでそんな表現になりますが、私は楽しいからこの「腕まで連動させるペダリング」でやっていて、調子の良い時は前輪の軌跡が微妙に8の字を描くことがあり、自転車がぐんぐん進んでいる感覚を得ています。仮に若干の非効率性があったとしても、「楽しい」というフィードバックがプラスに働いているので、最終的には速くなっていると思いますし、無駄だからやめろと言われてもやめることはできません。そういうこともあるから「個別性が高い」と私は思うわけです。機械と人間は違う。

重力が師匠

その個別性のある自分だけのフォームに到達するための「身体の使い方」に気付くために誰もが共通して利用できる良いフィードバックがあります。それが「重力」です。この練習では、スムーズなペダリングが行えていないと「重力」からダメ出しを受けます。クランクの回転がギクシャクしたものになります。鍛錬に疲れたとき、リカバリーのとき、ゆっくり登りたいときなどに是非やってみてください。かしこ。

Since: 2020-12-27, Updated: 2021-01-11