この記事は各トレーニングの効果を一つに絞って単純化し、イメージとして理解しやすくしていますが、実際にはトレーニングの効果はその領域をまたいで絡み合っていることに留意してください。
イメージって、大事ですよね~。
自転車乗りのパワーの源は、2つのエンジンで喩えることができます。有酸素エンジンと無酸素エンジンです。
有酸素エンジンは、5分以上の継続するパワーを作り出すエンジンです。強くなるためには、この有酸素エンジンの排気量をアップ(L5錬)させ、そのエンジン効率を上げる(L4錬)とともに、燃料タンクを大きくし(L3錬)、燃費を向上(L2錬)させます。どれが欠けても、成長は止まってしまう可能性があります。これらをバランスよく成長させて、ご自分の潜在能力を引き出しましょう!
無酸素エンジンが作り出すのは、数分未満の短時間で発揮できるパワーです。ここでは扱いません。
有酸素エンジンの排気量そのものをアップさせるトレーニングが、FTPの105~120%の領域を鍛えるL5錬です。潜在的なFTPの限界値を引き上げます。50ccのスクーターのエンジンをボアアップして90ccにすれば確実にパワーアップするのと同じです。つまりパワトレの本質といっても良いくらいの大切なトレーニングだと、私は考えております。
強い人たちが集まる練習会では折角の機会ですから、このパワー域にたくさん刺激を入れるよう意識したいところです。そのためには後ろにくっついているだけではなく、どんどん前を牽く、数分間のアタックをかける、などといった積極的な動きが必要です。(私が練習会に参加する理由のほとんど全ては、VO2maxのまたとない成長機会だからです)
パワーの出しすぎには注意が必要です!高すぎると無酸素エンジンに切り替わってしまいます。
SSTなどのL4錬は、有酸素エンジンのエンジン効率をアップさせるトレーニングです。FTPそのものを向上させる効果がありますが、潜在的なFTP限界値を超えることはできません。50ccのスクーターのキャブレターやマフラーを純正品から変更すると簡単にパワーを上げることができますが、限界があるということです。
大量の乳酸を処理させると、乳酸をエネルギーとして利用できる身体に変化していきます。エネルギーとして利用できない乳酸は呼吸を苦しくさせますが、逆にこれを燃料として利用できるようになるわけですから、パワトレ初心者がL4錬を行うと恐ろしいほど成長します。この練習効率の高さは、やがて「排気量制限」による限界点を迎えたとき、成長が止まったと勘違いしてしまう原因でもあります(パワトレあるある)。
こちらもパワーの出しすぎには注意が必要です!きつい思いをしてFTP強度を30分維持するより、90%FTPを楽々40分回す方がたくさんの乳酸を処理できます(=効果があります)。また継続性も高いと言えます。
有酸素エンジン用の燃料タンクの一つ「グリコーゲンタンク」を増量するトレーニングが、L3錬です。筋グリコーゲンを空っぽにするためには、L4錬では強度が高すぎて先に神経系の疲労が限界に達し「足が終わって」しまいます。テンポ走と呼ばれるL3の強度なら、かなりの長時間グリコーゲンを消費することにより、筋グリコーゲンを「ほぼ」空っぽにすることができるという寸法です。
最初は楽々ですが終盤バテバテのきついトレーニングなので費用対効果が悪いように思えるかもしれません。しかしトレーニング領域の効果はハッキリ線引きできるわけもなく実際は混ざりあっています。乳酸が多量に処理されるという意味ではL4錬の効果も見込める練習ですので、時間があればこちらの方が美味しいかもしれません。
燃料効率をアップさせるのはL2錬です。グリコーゲンの代わりにより多くの脂肪を燃焼させるよう有酸素エンジンの性質を変化させ、結果的にグリコーゲンという燃料を節約することができます。なお、燃料としての脂肪の貯蔵量はほぼ無尽蔵です(グリコーゲンが約1,000kcalで枯渇するのに対して、脂肪は数万kcalの貯蔵量があります)。
多大な時間を使って効果それだけ?と思われるかもしれませんがさにあらず。グリコーゲンを浪費しないのがこのトレーニングの最大の長所です。燃費アップだけでなく脂肪燃焼にも最適である他、有酸素エンジンの核であるミトコンドリアにも刺激を加えてくれることが期待できます。極端な話、エンジン効率を極限まで高めたら、もうL2とL5だけやっていればいいという理論まで存在します。ペダリングに意識を集中しやすいため、ペダリング技術練習にも最適です。
| 略称 | 名称 | %FTP | 効果(イメージ) | 1回のトレーニングで必要なボリューム | 中期的に必要なボリューム(個人差あり) | 練習方法 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| L5 | VO2max | 105~120% | エンジン排気量アップ | 15~20分前後 | 不明(レベルに応じて様々) | 10分全力走×2、120%FTP30秒+75%FTP30秒インターバル、109%FTP40秒+75%FTP20秒インターバル、不動峠TTなど |
| L4 | Threshold | 90~104% | エンジン効率アップ | 0.5時間前後 | 月に5時間以上 | いわゆるSSTや、人気のCarsonなど |
| L3 | Tempo | 75~89% | 燃料タンク増量 | 1時間 | - | 足が終わる寸前までのテンポ走、カスイチTTなど |
| L2 | Endurance | 55~74% | 燃費向上 | 1時間~ | 月に10時間以上 | ロングライドなど |
以下のどのトレーニングも、高い心拍数(90%MaxHR)をなるべく長い時間維持することが成長につながりますので、メインパートに入る前にウォーミングアップを行って十分に心拍数を高めておくと効果的です。