使えるダンシング

私は世間的にいえばただの素人です。ただし、15年以上、ほぼ毎日自転車に乗りながらクランクの回し方のことばかり考えている変な素人です。誤った情報を伝えてしまうことを怖れますが、それでも、正しいダンシング、というものが「ある」と仮定して、それに一歩でも近づいていきたいと思います。ここでは、そのために、確実に「間違っている」と思われる動きに焦点をあて、その動きににならないためにはどうするか、ということを突き詰めていく方法をとります。

やってはいけないこと「下死点で踏み込む」

クランクが6時の位置(下死点)にあるとき、さらに下方向に体重をかけて踏みつけても、推進力にはなりません。踏みつけるエネルギーを捨てています。上体がまっすぐ立っているママチャリの立ち漕ぎでは、下死点において完全に体重がペダルに乗ってしまっていますので、この瞬間は推進力が失われています。

7%くらいの普通の坂道でダンシングをしているとき、ペダルを踏んでいる瞬間だけグイっと前に進むロードバイクを見たことがあると思いますが、あれは加速と減速をくり返しているのが目に見えて分かるほど、効率の悪い乗り方です。

これは明らかに「間違った」方法といっていいと思います。上半身を使わない分、楽かもしれませんが、遅いしエネルギーを捨てているわけですので、よりよい方法がありそうです。

下死点ではペダルではなく、ハンドルに荷重をかける

ダンシング中はペダルかハンドル、どちらかにしか荷重をかけることができません。ペダルにかけるはずだった荷重を逃がすには、ハンドルしかありません。ハンドルに荷重が逃げているため、ペダルは下死点をスムーズに通過できます。実はこのように説明している文書にほとんど出会えていないのですが、論理的な瑕疵はないはずです。

さて、下死点の位置でペダルを踏みつけることによって下向きのベクトルを発生させていた体重は、ハンドルの方に向かいました。少なくともこれで、クランクがスムーズに回るようになります。

大抵の人はこういう動作を無意識に行っています。バイクが左右に揺れるのはこの荷重移動もその一因になっているでしょう。右クランクを踏んでいるときは左ブラケット、左クランクを踏んでいるときは、右ブラケットに、それぞれ荷重が移動してします。

ただし実際にハンドル荷重をかけるタイミングに注意してください。後述します。

ためしに、上半身を完全に起こした状態で「立ち漕ぎ」をしてみましょう。スポーツバイクでは難しいので、ママチャリでやります。この場合、自転車を左右に振っても振らなくても、推進力に影響がないことが感じられます。むしろあまり振らない方が安定して進むでしょう。なんとなれば、荷重はずっとペダル だけ にかかっているのですから。

ハンドルにかける荷重は、前方にする

ではハンドルにかける荷重の「方向」はどうすればいいでしょうか。下?横?――いやいや、前に進みたいのだから前にかけるに決まっています。

多くの経験者が、ダンシングではハンドルを「押せ」と言っているのには、明確かつ明白な理由があるわけです。

これは「押す派」とか「引く派」とかいう以前の事実として、先ほど紹介した加速と減速を繰り返してしまうガタガタのダンシングにならない人であれば、誰でも自然に行っていることです。スムーズにクランクを回したければ、右斜め前方、左斜め前方に交互に体重を乗せ換える、という動きが自然にでてきます。

ハンドルに荷重をかけるといっても、右または左どちらかのブラケットにしかかけられませんから、自然と右斜め前方か、左斜め前方となるわけです。だから斜めといってもほんの少しです。

ほんのすこしと言っても斜めですから、前方に修正する動きが必要になります。ハンドルを押す方向を多少内側に入れる など して修正することになりますが、おそらくここが難しいところです。なぜなら状況によっては反対側のハンドルを 引く 力を加えることも必要になってきますので、そのときは押す方向が変わってくるからです。

理屈で理解しても意味のない、練習によって会得するしかない動きになります。

ハンドルに荷重を移動させるタイミング

荷重をかけるタイミングは、結構早めになるようです。下死点でかけ始めていては遅すぎます。自分の場合、クランクが3時くらいのところで体重を前方に移動させるくらいでちょうどよいと感じています。

「休むダンシング」理論で注意すべきこと

休むダンシングという方法が、巷では常識化しています。概ね共通しているのは、「上体を起こせ」というものです。これはハンドル荷重が少なくなることを意味しています。

平坦では、スピードが出ていれば自転車は惰性で前に進みます。つまりクランクはほとんど力を加えずとも勝手に回ってくれます。クランクの踏み替えさえスムーズに行っていれば、下死点で踏みつけている時間は無視できる程度のほんの一瞬で済むわけです。捨てているエネルギーはほんのわずかで済むので、そのわずかなエネルギーを犠牲にしてでも使う筋肉を変えたいときに行うべきものです。

ということは、足を完全に休ませたいときは、ある程度上体を前傾させて荷重移動を使った方が良いことが分かります。下死点でのクランクの移動がさらにスムーズになり、楽に回せている感覚が得られます。

また、斜度の高い登板においては惰性では前に進んでくれません。したがって「休むダンシング」をやっていると、パック(集団)についていくのにより大きなエネルギーを消費することになります。前方荷重を使ってダンシングした方が楽についていけるはずです。

もちろんスピードを犠牲にしてよいのであれば、休むダンシングは何の問題もありません。しかし、それなら究極的には自転車を降りて休むのが一番ということになってしまいます。

上半身を鍛える必要性

ダンシングを行うためには、荷重の移動を支持するだけの上半身の 筋持久力 が必要です。長く続けたときに上半身が悲鳴を上げているようでは、ダンシングを使えているとは言い難いでしょう。

Since: 2022-12-04, Updated: 2024-01-07

更新履歴

2024-01-07